プッチィ(その1)

4、5年前、縁あって別府で個展をしていたら、50歳半ばくらいの見知らぬ紳士がニコニコしながら会場に入ってきた。
スタスタ跳ねるようにこちらに近づいてきたかと思うと両の手を差し出し、キラキラ眼でこう言った。
「アジサカさん、ププのファンです!」

ププというのはずいぶんと前、福岡の地方誌に連載してた漫画の主人公の名だ。
彼は当時この漫画がたいそう気に入って、単行本をまとめ買いして友人知人に配って回るほどだったという。
ものすごーく、ありがたい話だ。
恐縮して聞いてると、彼は梱包材の”プチプチ”を作ってるとこの社長さんで、その別宅が個展会場のすぐ近所にあるという。
通りすがりに見てみたら聞き覚えのある名が掲げてあるので、「もしや」と思って飛び込んできたのだそうだ。

その後、埼玉住まいの彼が九州へ出張に来た際などに一緒に飲み食いするようになった。
そのうち、彼の会社の社内報でしばらく漫画を描くことになった。

上に掲げたのはその第一回目です。
気が向いたら引き続きこの場にアップしていこうと思います。

門司港にて

昨年暮れの個展の最終日、持ってきた弁当食って歯を磨いてコーヒー飲みながらブラックサンダーほおばってたら、開廊時間になるやいなや、ずずんと二人の大男が入ってきた。
今まさに山から降りてきたような勢いだったので、「今日の獲物だ!」とか言いながらドスンと猪肉でも放り出すんじゃないかと思って身構えた。
どう見ても、花に囲まれた女の子の絵なんかを見にきた風には見えなかった。
見に行くなら、荒地を駆ける雄牛とか、ハーレーに跨る髭の巨漢とかの絵の方だろうと感じた。

「昨日の夜、何気なくインスタ見てたら、この個展のこと知って...こりゃあヤバイと思って、飛んできました」

話し出したら、見かけとは裏腹に物腰の柔らかい紳士的な人たちだった。
なんでも、世界各地を旅していろんなものを買い付け、輸入販売をするのが主な仕事だという。
アメリカなんかでは車であちこちを周り、目にとまった古いビルを土地ごと丸一軒買ったりするそうだ。
解体して出た木材や金具、什器や装飾品なんかを持ってきて、それを店舗の内外装なんかに使うのだ。
話を聞いてるとやたらスケールが大きい。
だって、年明け早々には数週間かけて南米各地を周り、イースター島にモアイ像発掘見学に行くという。

さて、そんな彼らが毎年GWに門司港で、大きなアンティークフェアを主催している。
「ANTIQUING」というものだ。
話の流れで、そのチラシの絵を描くことになった。

上に掲げたのがその絵です。