「菫」(新・西郷その3)

「あら、西郷くん、何してんの?」

「見ての通り、NYの一番高いペントハウスのジャグジー風呂でブロンド美女たちに囲まれてシャンパン飲んでるところ」

「あら、とてもそんな風には見えないけど...」

「実はここから温泉が湧き出てくるんで手で押さえてるのさ」

「ああ、そのお湯を使ってNYに高級銭湯作るって言う算段ね!」

「あ、それとはちょっと違います」

「あら、そうなの、がっかり...じゃあ、ただ押さえてるだけ?」

「そうでもないさ...実を言えば、ここに湯治場を作ろうと思ってる」

「湯治場?」

「うん、農閑期、みんなが労働の疲れを癒しに来れるように」

「ふうん、そうかー、ちょっとがっかり...あたしNYへ行きたかったなーっ」

「すまんすまん」

「ところで、手、真っ赤よ、熱くないの?」

「めちゃ熱い」

「だったらさっさと放しなさいよ」

「だってそうしたら、どばーって熱湯が吹き出して君にかかってしまう」

「あら、あたしのために?そうなの...ありがとう」

「ところでタンポポさん、名前をまだ聞いてなかった...」

「ああ、あたしの名前は菫。
春に生まれたからって、お父さんがつけてくれたの...」

「そう...いい名だ。」