「道標」(新・西郷その5)

「ねえ、もっともっと飛ばしてよ!」

「おお、わかった!」

「ところでこのオートバイ、なんで走ってんの?」

「何でって、走ってなきゃ倒れちまうからさ」

「そうじゃなくて、どんな燃料で走ってるのかって聞いてんの」

「あ、それは花さ」

「え、花?」

「ああ、花を摘んでこのでっかい李朝の白磁の壺に放り込むだろ」

「ええ」

「そしたらキムチみたいに発酵して強烈なエネルギーを出すんだ」

「ひゃあ」

「それで走ってる。時速千キロだ。リニアモーターカーよりずっと早い」

「へえ、そうなんだー。で、私たちどこ行ってんの?」

「そりゃあ花がいっぱい咲いてるとこさ」

「ふーん...」
「あ、白い花!」

「おお、道しるべだ」
「方角は間違っていないぞ」