ここ一年ばかり気軽に外出もままならず、やたらめったら人恋しかったのと、ネット上などで垣間見る人々の顔がとてもつまらなく感じたのとで、気がついたらば「ああ、こんな人がいたらいいのにな、会いたいなあ...」と思うような人の姿ばかりをたくさん描いていた。
”こんな人”ってどんな人やねん?というと、それは大勢に流されぬ狷介不羈(けんかいふき)な人、つまり自由人(=”ロック”な人)のことです。
最近読んだ本の中で鶴しゅん(鶴見俊輔の略)がこんなことを言っていた。
「ツルゲーネフが、トルストイとドストエフスキーのかげにかくれて日本で読まれなくなったのは、日本の知識人に自由主義(うたがいつづける心)が強くうったえないためだろう。トルストイも、ドフトエフスキーも、うたがいのはたらきをけしてしまうところがある。国家主義、共産主義、進歩主義に共通のものは、これがただ一つの正しい道だという、うたがいのないところに安住する思想である。」(鶴見俊輔・全漫画論2)
手前勝手ながら(”ロシア文学”や”知識人”はさておいて)この部分だけ読んで、「自由な心」ってのは「うたがう心」のことなのだ!とひどく合点がいった。
この文章は1996年に書かれたものだけど、ここのところますます”うたがう心のない”社会になってるという気が強くする。
だって「信じて従う」ことが良いことである一方、「うたがい抗う」ことは悪いことみたい。誰しもが自由であることを避け、さらには自由である人を厭わしく思ってるようにさえ感じる。(そういえば、大学のゼミで「自由からの逃走」(E.フロム)ってのを読まされたよなあ...)
日々目にする様々な出来事をいちいちうたがったりしてたらばそりゃあ疲れる。有りのままの大勢に従ってた方が楽だ。
本当に自由であるためには、その代償として孤独や責任を引き受けなきゃあならない。 それにはけっこう骨がおれる。やめといた方が無難だ。
けど、それじゃあ世の中、万人にとって良くなるわけがないぞ。
というわけで、(お前なんかにロックがわかるんかい!との謗りを受けつつ)こんな風潮にペッと唾を吐きかけたり、プッと屁をかましたりする感じなのが今回の個展です。(笑)
展示作品はここ一年に描いた大小様々のポートレートばかりが一挙に120点!
並べてみたなら図らずも年若い女性の姿が多くなってたぞ。
(つまり総じて彼女らの中により自由な心、ロックな心が強くあるからなのだろう)
個展のタイトルは往年のヒット曲「星影のワルツ」をもじったものです(笑)
期間中、土日は会場におります。
未だかような状況ですが、ひょろり立ち寄っていただければ望外のしあわせであります。
というか、風通しとか十分良くしとくけん、ぜひ来てくれよー。
アジサカコウジ 冬個展 2020
「面影ロック」
会期:2020年12月5日(土)~12月27日(日) (月・火曜休み)
時間:13:00-19:00
場所:EUREKA 福岡市中央区大手門2-9-30-201
TEL :092-406-4555
※期間中毎週土・日曜はアジサカ在廊